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隣の席
大きな声で聞こえるように悪口を言うようなやつもいればヒソヒソと聞こえないように陰口を言うやつもいる。そんな状況なのに転校生はそれを気にもとめない様子で続けて話す。口元しか見えないけど弧を描く口元を見る限り多分笑っているんだろう
なんだこの空気の読めない転校生
そう思ったのと同時にこの転校生が少し羨ましくも感じた
この学園に編入してきた時はみんなと変わらない楽しい生活を送っていた。しかし俺はあることが原因でこの学園の風習と生徒たちの残酷さに失望して馴染めなくなった。それからはずっと一人で過ごして楽しいことも1つもない退屈な生活だった。きっと自分はこの学園に馴染むことは出来ないだろうと諦めていた。
でも、あの子を見て考えが変わった。
空気が読めないだけかもしれないけど凄い明るくて元気で俺もあれぐらいバカだったらこんな風にに孤立した感じにもならなかったのかななんて思ってしまう
「席は〜、あぁ、藤崎の隣だ」
転校初日の子が俺の事なんて知ってるはずないのにあの先生、…。キョロキョロと見渡す転校生にわかるように呼ぶように手を振って俺の場所を教える
気がついた転校生がぱっと明るい顔をこちらに向け小走りで走ってくる
この子とだったら仲良くできるかもだなんて
少し期待しながら挨拶しようとする
「よろ「よろしくね」
「おう、よろしくな!」
俺の言葉を遮るように転校生の席の反対側の子が声をかける。あの子もさっきまでみんなと同じように悪口言ってたはずだけど笑顔で転校生によろしくと挨拶をする。その理由なんて分かりきってるんだけどさ
自分が声をかけてその言葉を投げかけられるはずだったのに、少し悲しくなる
「お前もよろしくな!!」
転校生がくるりと向きを変え俺に挨拶する
俺の声は聞こえなかっただろうから来ると思ってなくてびっくりしてしまった
「藤崎だよな?下の名前なんて言うんだ??」
転校生が固まる俺を覗き込むように聞いてくる
近い、離れないとと思って距離を取ろうとするがまた近づいてくる転校生に慌ててしまう
「俺、は…」
返事をしようとした瞬間奥の子と目が合う
その子のさっきまでの優しい笑みがゆっくりと真顔に変わるのを見て悪寒が走る
「ごめん、俺ちょっと用事あるから」
俺たちが話してる間にHRは終わっていた
おいと後ろから転校生に呼ばれるが無視して教室から出る。教室を出る時あの子と目が合いにこりと微笑まれるが目は笑っておらずまたゾクリと体が震える
もうあんなことにはなりたくない
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