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こんなときどう振る舞ったらいいのだろう。
二人の前に飛び出して怒鳴り散らすのだろうか。
電話して慌てているのを眺めほくそ笑むのだろうか。
惨めだ。
途中のコンビニで弁当を買い、自宅に帰るなり箸をつける。
食べようとしても胃が受けつけず、半分以上残したままシャワーを浴びる。
誰と会ってたかぐらい確認するだろうか。
ふつうならそのくらいするかもしれない。
けれど。
腕を組んでジュエリーショップに入ったけど友だちですって説明を、私は聞かないといけないのだろうか。
惨めだ。
洗面台で肌荒れした顔と向かいながら歯磨きしていると、思い出した。
1週間前に裕太の家に行ったとき、見慣れない新しい歯ブラシがあったことを。
「別れたい」とだけ送ってカバーを閉じたスマホを翌朝になって開いてみると、無数のリプライと着信があった。
2年続いた関係を4文字で終わらせるのはさすがにあんまりだろうと、ベッドから身をおこし画面をゆっくりとタップする。
「もしも……」
「裕奈別れたいってどういうことなの!? どうした? なんかあった?」
犬が吠えるような声。
「俺、なにかした?」
浮気したでしょ、と投げかければ、もっともらしい説明を聞けたかもしれない。
けれど。
目で見て答えがわかってるものを聞いて答え合わせするほど、無駄なことはない。
裏切りの悲しみを2回も体験する必要なんて、ない。
「とにかく別れたい」
10分続いた電話をそう言って終わらせた。
ちょっと時間を置いてからまた話そう、と提案されたけれど、手を滑らせて落としたお皿のひびがもとに戻ることなんて、あるのだろうか。
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