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校舎内はしんとしていた。
部活がある奴は部活中、帰宅部はとっくに下校済みなのだ。
俺だって掃除当番じゃなきゃとっくに電車の中だっただろう。
うちの教室だって空っぽのは──ず!?
俺はがらりとドアを開けたそのそばから身を翻した。
だって、今女子が着替えてなかったか?
教室から死角になる階段まで必死に走る。覗きだと疑われでもしたらとんでもない。
女子は一人でこちらに背を向けていたし、顔は見られていないはずだ。
それに──まあこれは言い訳だが──決定的な何かを見てしまったわけじゃない。
「──戸倉くん」
突然背後から声をかけられ、俺は「うわあ!」と情けない驚き方をしてしまった。
振り返って声の主を確かめる。同じクラスの女子──渡辺くるみだった。
ああ、なんだかものすごく嫌な予感がする。
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