始動

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始動

「ええ……まじか……」  一体誰とどう話をつけたのか、くるみはあれからたった一週間で「活動場所」を手に入れた。  第二相談室という、今ではまったく使われていない小さな部屋である。  くるみはその部屋の鍵を弄びながら現れたのだ。 「ちょっとは見直した?」  くるみはそう言ってうふふと笑う。  見直すも何も、見くびる暇すらなかったのだが──なんて言っても仕方ないので黙っている。  その間にもくるみはさっさと鍵を開け、部屋の中に入ってしまった。俺もその後に続く。 「──は?」  部屋に入った瞬間、俺は思わず自分の目を疑った。  長机とパイプ椅子が無造作に並べられているだけの空間──それが本来の「相談室」のはずだ。なのに。 「何だこれ」  目の前にはなぜか革張りのソファが鎮座している。さながら来客用の応接間のようだった。
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