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4.
「無いとは言わん。この肥溜めみたいな戦場を抜き生き延びれば、いずれその者の前に天空にかかる橋が現れるという。それが貴様を次の高みへと引き上げるだろう」
「そんな夢のような話があるのでしょうか?」
「確証はない。大抵の者は戦うことを捨て骸となって土に還る。だがあの兵士を見ろ」
軍曹が示したのは、ヨボヨボになってなお戦う老兵の姿だった。
「彼はまだ戦いを止めていない。諦めればそこで道は途絶える。残るのは足跡のみ」
とつぜん上空に警報が鳴り響いた。
「帝国から次の出撃命令が出たぞ。すぐに相手が押し寄せてくる。戦闘準備!」
「もうかよ!」
『私』たちの不平の声が響く。軍曹が怠けた態度の者たちを叱ろうと口を開いた。
その時だった。
隠れていた読者の銃口がキラリと光った。それは私に向けられていた。
「よけろ!」
言葉と同時に放たれた弾が、私を庇った軍曹の胸を撃ち抜いた。傷は致命的だった。
「どうして……私を……」
「お前たちは……『仲間』だからだ。かつては俺も前線で戦っていた。だが道半ばにして挫けてしまった。そんな俺に出来ることは……お前たちに教えること……だけ……」
「軍曹!」
軍曹は震える手を伸ばした。
「進め……戦うのだ。泣き叫んでも、落ち込んでも書き続けろ。死ぬまで相手に弾丸を撃ち込んでやれ。それが創作という道を選んだ者ができる……唯一の……誇り……」
その言葉を最後に、軍曹は息を引き取った。
私は立ち上がり、友軍に向かって叫んだ!
「戦え『仲間』たち! 軍曹の分まで……朽ちていった奴らの分まで! 自分を信じて作品を撃ち続けろ!!」
(『私』の戦い おわり)
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