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「無いとは言わん。この肥溜めみたいな戦場を抜き生き延びれば、いずれその者の前に天空(ヴァルハラ)にかかる橋が現れるという。それが貴様を次の高みへと引き上げるだろう」 「そんな夢のような話があるのでしょうか?」 「確証はない。大抵の者は戦うことを捨て(むくろ)となって土に還る。だがあの兵士を見ろ」  軍曹が示したのは、ヨボヨボになってなお戦う老兵の姿だった。 「彼はまだ戦いを止めていない。諦めればそこで道は途絶える。残るのは足跡のみ」  とつぜん上空に警報が鳴り響いた。 「帝国から次の出撃命令(テーマ)が出たぞ。すぐに相手が押し寄せてくる。戦闘準備!」 「もうかよ!」  『私』たちの不平の声が響く。軍曹が怠けた態度の者たちを叱ろうと口を開いた。  その時だった。  隠れていた読者の銃口(辛辣なコメント)がキラリと光った。それは私に向けられていた。 「よけろ!」  言葉と同時に放たれた弾が、私を(かば)った軍曹の胸を撃ち抜いた。傷は致命的だった。 「どうして……私を……」 「お前たちは……『仲間』だからだ。かつては俺も前線(ここ)で戦っていた。だが道半ばにして(くじ)けてしまった。そんな俺に出来ることは……お前たちに教えること……だけ……」 「軍曹!」  軍曹は震える手を伸ばした。 「進め……戦うのだ。泣き叫んでも、落ち込んでも書き続けろ。死ぬまで相手に弾丸を撃ち込んでやれ。それが創作という道を選んだ者ができる……唯一の……誇り(プライド)……」  その言葉を最後に、軍曹は息を引き取った。  私は立ち上がり、友軍に向かって叫んだ! 「戦え『仲間』たち! 軍曹の分まで……朽ちていった奴らの分まで! 自分を信じて作品(たま)を撃ち続けろ!!」 (『私』の戦い    おわり)
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