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3.
軍曹は言う。
「奴らは何人いるか分からない、無限の存在だ。ひとりひとりを区別することは極めて難しい。お前たちの持っているクソみたいな弾が、すべての相手に効くと思ったら大間違いだ!」
「軍曹! 私はどのように戦えばよいのでしょうか!」
「馬鹿者! そんな簡単に答えを求めるな! 強いて言うなら、相手を無限に打ち寄せる海の波だと思え! お前らの出来ることは、作品を小瓶に詰めて、ひたすら海に放り投げる事だけだ! 誰かに拾われることを期待せずにな!」
ひとりの弱りきった『私』が軍曹の足元にたどり着き、作品を差し出した。
「……できました。どうでしょうか?」
彼が紙面をにらんだのは、わずか数秒にすぎない。だが軍曹は鼻を鳴らすと、作品を粉々に引き裂いてしまった。
「こんな軟弱なアイディアが、いまの読者の胸に刺さると思うか! 出直してこんか、この大馬鹿者! 貴様に比べれば、サーカスの象に文字を書かせる方がよっぽどましだ!」
可愛そうな『私』は真っ白になり、大気の塵となって消えていった。
「他に根性のある奴はおらんのか! 早く作品を撃ち込まないと、次の相手が押し寄せてくるぞ!」
誰もが怯える中で、私はひとり立ち上がった。
「貴様、作品が出来たのか?」
「いえ……でも伺いたいんです。軍曹、この戦いに終わりはあるのですか?」
怒鳴られると思った。しかし軍曹は真面目な顔で答えた。
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