46人が本棚に入れています
本棚に追加
原作と作画、そのことについて説明をするとトーマルはふむふむと納得したようだ。
「このことは公言しないでくれよ?」
「分かっているよ。ぼくは口が堅いんだ。でも女の子に問い詰められたらゲロってしまうかもしれないな!」
口を大きく開けて笑うこの友人は、昔から口を閉じて笑う方が優雅だと言っても聞き入れはしない。
「それで? どのジャンルの漫画なんだ? 分かった、少年漫画だろう!」
胸を張って言うトーマルだが、残念なことにそれは違う。
大方、花嵐の風体見てそう思ったのだろうな。
「あ、いや、その……、」
案の定醜男はしどろもどろとなり、やがて黙って俯いてしまった。
やはりBL漫画とは言い難いようだ。
「それは形になってからのお楽しみというやつだ。トーマル、野菜も食べろ」
シーザーサラダが盛られた器を差し出すと、真白の男はベッと舌を出す。
「野菜は好きじゃない。ぼくは動物性タンパク質だけで生きていく」
「駄目だ。ちゃんと食べろ」
むぅと不服そうにパリパリとレタスを食むトーマルは、それ以上漫画については触れてこなかった。
はぁ、どうしてこの私がフォローをしてやらないといけないんだ。
「……あ、ありがとうございます、」
ボソリと隣から聞こえてきたそれに反応するように目を向けると、花嵐が困ったように笑っていた。
別にお前の為なんかではないが、そうやって感謝されるのは悪くないかな。
程なくしてトーマルはこんなことを言い出した。
「ハルも呼ぼうぜ!」
その名前に心臓がドキッと跳ねた。
彼が──ハルがここに来る?
いつもなら嬉しいのに、今日は後ろめたさを感じてしまう。
何も言えないでいると、その間にトーマルはハルに電話をかける。
胸中に渦巻くモヤモヤを不快に思いながら隣の様子を伺うと、花嵐は一生懸命枝豆を食べている最中だ。……なんだかムカついたので机の下で、ヤツの足を力の限り踏みつけておいた。
最初のコメントを投稿しよう!