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路地裏の喫茶店。
レトロで洒落た外観の店へと入ると、カウンター内にいる老齢の男が微笑んで出迎えてくれる。
「いらっしゃい」
「ああ、こんにちは」
しゃがれた声にそう返し、店の奥にある唯一のボックス席へと向かう。
「ありゃ、天道先生でした。こんにちは」
既に席に座っていた先客──涼風社 コミックVirgo編集部の霙は私の姿を認めると苦々しい顔をする。
ふーん。この美し過ぎる私を見てそんな顔をするだなんてどういうつもりかな? 無愛想なマスターだって思わず笑顔になるほどなのにな。
「私では何か不都合でも?」
霙の向かいに座りつつ意地悪く訊ねると、彼は気まずそうに答える。
「いえ、実はハナちゃんがまだでして……、」
はぁ? と今度はこちらが表情を歪めて霙の隣を見ると確かに空っぽだ。
へー、ふーん、そうか。あの醜男、この私よりも遅れてくるというんだな? 醜いくせに一体何様のつもりだ?!
「あー、もう少ししたら来ると思うので少々お待ち下さいね?」
急いでケータイを操作し始めるあたり、霙はちゃんと"上下関係"というものが分かっているようだ。
イライラとした気持ちであの男が来るのを待ちわびる。
この私が直々に説教してやらないとね。
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