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「お、遅れてすみませんでしたぁ~!」
ゼイゼイと息を乱し、汗をダラダラと流しながらやって来たのはBL漫画家・花咲 葵。本名は花嵐 蒼辰。
相変わらず不細工で優雅さの欠片もない。
「ハナちゃん何してたの?」
「ごめ、ごめんなさいミゾレさん! 時計のアラームが壊れて鳴らなかった上に靴紐が全部千切れて、来る途中にヤンキーに絡まれたり階段を手すりごと落ちたりして遅れました!! お、おれ間が悪くて~」
"間が悪い"というレベルの話だろうか? お祓いをしてもらった方がいいと思うが、そんなこと言ってやらない。
「え、手は怪我してない?」
「大丈夫っス、おれ丈夫なだけが取り柄なので」
「絵が上手いのも取り柄でしょ。それと、天道先生にも謝って」
「あ、そ、そうですね……」
やっとこちらを向いた醜男は謝罪だと言うのにふにゃりと口元を緩める。
「はぁ~、今日も推しが美人過ぎて生きるのが辛い! 後光が差してて眩しい! 推ししか勝たん!」
コイツ、謝る気0か。
私なら美しいというだけで何をしてしても許されるが、お前は駄目だろう。
「ハナちゃん!」
「はっ! ええと、その、遅れて大変申し訳ありませんでした、カリ──」
名前を呼ばれそうになったのでキッと睨みつけると、花嵐はビクリと身体を震わせて黙り込んだ。
はぁ、全く勘弁してほしいな。
不細工が軽々しく私の名を呼ぶだなんて過ぎているだろうに。
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