上と下

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傷んだ黒髪はもさもさと四方に跳ねており、長過ぎる前髪は両目を隠してしまっている。 ぷつぷつと生えた無精髭がだらしないし、自信無さげな猫背が見ていて鬱陶しい。 ショッキンググリーンのヘッドホンを首にかけるのが花嵐流のオシャレか何かなのだろうが……正直ダサいな。 ──というか。 「何故君はもうそんなにもみすぼらしくなっているのかな? 1週間前に美容院でカットをして、まぁまぁ見られる姿になったばかりじゃないか」 友人の家で偶然知り合った美容師が働く美容院へと連れて行ったのはつい最近のことだ。 うっとうしい長い髪をカットしてもらい、"万人受けはしないだろうが悪くはない顔"がやっとお披露目したはずなのに今はすっかりと元通りになっている。 「ええと、おれ、昔から異様に髪とか爪とか髭が伸びるのが早いんですよ。ま、前髪とか本当に直ぐ長くなって困るんです」 いじいじと髪を弄りながら花嵐は言うが、体質だからといって仕方ないで済む話ではない。それならそれでどうにか対処すべきだ。 「そういえば爪や髪が早く伸びるヤツは助平だと聞くね。君も禁欲したらいいんじゃないかな?」 美を追及しない者に興味などなく、冷たくそんな迷信を口にすると花嵐はポンッと手を叩いて何かに納得している。……嫌な予感しかしないぞ。 「成程。毎晩カリンさんのことをオカズにしてシコってるからこんなにも伸びるのが早いんですね! 合点しました」 "合点しました"じゃない!! 往来で何を急に言い出すんだコイツは?? 阿呆なのか? 馬鹿なのか?
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