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「ところでカリンさん、昼飯でも食いに行きませんか? この近くに美味しいラーメン屋があるんです。今日はおれが奢りますので!」
性欲の次は食欲か。本当に単純で呆れるな。
「結構だ、ラーメンはあまり好きではない。というか、何故君なんかと一緒に食事をしないといけないのかな?」
自分のことを夜のオカズにしている醜男と食事だなんて、食欲が失せるに決まっているじゃないか。
「え、……おれたち恋人同士なんだからデートは普通だと思うんですけど、」
ずっこけそうになった。
とりあえず通行人の邪魔にならないように歩道の脇へと移動する。
「どうして私たちが恋人同士なんだ? いつの間にそうなった?」
小さな声で問い詰めると、花嵐はゴニョゴニョと答える。
「え……だ、だって、おれたちセックスしたし。それに、カリンさんが原作の仕事をオッケーしてくれたのは恋人であるおれの為ですよね?? ち、違うんですか?」
「違う。何もかも全く違うね」
この男はどこまでオメデタイんだ?
「たかだか一度寝た位で恋人面をその不細工な面でされたくないな。それに私が仕事を引き受けたのは……そうだね、口止め料みたいなものさ」
更に声をひそめて続ける。
「私は自分がゲイだと公表していなくてね。だが君は知っている。つまり君は私の弱点を握っているんだ」
「お、おれがバラすと思ってるんですか?!」
「声が大きい」
思わず花嵐の腹をグーで殴ってみるが、ヤツは平気そうな顔をしていてむしろこちらの拳が痛かった。……鍛え過ぎは好きじゃないな。
「おれもゲイなのは公表していないんでバラしたりなんかしませんよ。そ、それに、おれとカリンさんだけの秘密♡だと思っているんで。ふへへ♡」
「ポジティブだね」
「でも、そーいう考え方もあるんですね。やっぱりカリンさんはおれと違って頭がいいなぁ」
何だか雲行きが怪しいな……。
「カ、カリンさんの弱味につけこんであんなことやこんなこと……お、おれの方が優位に命令出来ちゃったりして。エロ同人みたいに!」
今度は本気の力で鳩尾に一発叩き込んでおいた。
なにやら悶絶しているが、この私が下の立場だなんて絶対にありえないのだからね。
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