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美人と美人……と美人
原作の仕事を引き受けてから私と霙、そして花嵐を交えての打ち合わせは増えていった。
「きょ、今日こそ一緒に飯へ行きましょう!!」
「却下」
図々し過ぎるその願いを跳ね除けると、醜男は地団駄を踏む。
「い、一体いつになったらオッケーしてくれるんですか?」
「"いつ"があると何故思えるのかが私は不思議だよ。諦めの悪いヤツは嫌われてしまうよ?」
冷ややかに言うと、花嵐は不機嫌そうに唇を尖らせる。
「おれ、本来は何でもかんでも直ぐに諦めてしまう根性無しなんです。でもカリンさんのことだけは絶対に諦めたくはない。ずっとずっと好きだから」
本当に不思議な男だ。
いつもは自己評価が低く言い淀むのに、私のことを好きだと言う時だけはやけに自信に溢れている。
花嵐とって私はそれだけ特別だということだろう。……悪い気分ではないな。
「くどいようだが私と君とでは釣り合わない。美しい私と対等になろうだなんて傲慢だよ」
「それでも好きなんです!」
どんなに言ってもしつこく後を追いかけてくるので腹の中で笑う。
路地を抜けて表通りに出た時だった。
「カリンじゃないか!」
聞き馴染みのある声と、キラキラと輝くプラチナブロンド。──ああ、美しいな。
「偶然だな! そしていい所で出会った! 飯食いに行こうぜ、飯! 勿論キミの奢りでな!!」
……口を開かなければ。
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