♯11

1/1
前へ
/14ページ
次へ

♯11

 どうしたんだろう。いったい!!  突然、辺りは暗闇に閉ざされた。  部屋じゅうに墨汁を流したみたいな漆黒の闇が広がっていく。 「な、何……? どうしたの」  亜蘭が早口で訊いてきた。 「わ、わからないけど……、停電じゃないかなァ……」  天井の辺りを見上げ確認した。  停電なんて東北大震災の時と、数年前の台風以外、記憶にない。 「え、停電なの……」   亜蘭は不安げに尋ねた。  お互い心臓がドキドキしている。  知らぬ間に、亜蘭の唇が僕の頬に触れていた。  ギュッと亜蘭が抱きつくので少し痛いくらいだ。 「あ、あの……、少し力を弱めてくれよ」  息が止まるほど強く抱きしめられた。 「うン……、そう言えば、東北大震災の時も停電したねェ」  少しだけ力を(ゆる)めた。ようやく息がつける。 「あァ、あの時は、びっくりしたよ。信号も停まって、お巡りさんが手旗信号で車を誘導してたし……」  まるで別世界へ行ったような感覚だ。 ☆゚.*・。゚☆゚.*・。゚☆゚.*・。゚☆゚.*・。゚☆゚.*・。゚☆゚.*
/14ページ

最初のコメントを投稿しよう!

3人が本棚に入れています
本棚に追加