♯12 結婚すれば

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♯12 結婚すれば

 まるで別世界へ行ったような不思議な感覚だ。  僕たちは時間が経つのも忘れ抱き合っていた。  知らぬ間に身体じゅうが熱く火照(ほて)ってくるようだ。 「震災で停電になった夜もポーと、こうして抱き合っていたわね」  興奮しているのだろうか。彼女も、かすかに声が(うわ)ずっていた。 「あァ……、亜蘭が怖いって言うから」  ずっと前に、このベッドで一緒に寝た覚えがある。興奮して怖いのも忘れるくらいだ。  早いもので、あれから十年の時が流れた。  僕も今夜、二十歳のバースデーだ。 「あの時、二人で交わした約束を覚えてる?」  彼女が僕に尋ねてきた。 「え、まァ……、なにしろ十年以上前のことだからね」  僕は、(とぼ)けて忘れた振りをした。 「なによ。忘れたの」 「いや、それは……」 「私、あの時……、ポーに『大人になったら結婚してェ』ッて約束したのよ……」 「あァ……、そう言えば、そんな約束もしたねェ」  まさか、亜蘭が覚えてくれてたとは。  十年近く前の小学校の頃の約束だ。 「なによ。ポーッたら、約束を破る気なの」 「いやいや、だって、ずい分、昔……。  子供の頃の約束だろう……」   「約束を破ったら絶対に許さないわ」  またギュッと力を込めて抱きついた。 「イッ、痛いよォ……!! あの……、じゃあァ、僕はどうすれば許してくれるのかな」 「フフ、簡単なことよ!!」 「簡単……、じゃァ、なにか。ご馳走でもすれば許してくれるのかな。それともブランド物のバッグでもプレゼントすれば良いのか」 「バカね。そんなので誤魔化(ごまか)せると思ってるの」 「じゃ、どうすれば……」  高価なブランド品のアクセサリーや宝石(ジュエリー)か、なにかだろうか。 「フフ、決まってるでしょ!!  亜蘭と結婚すれば良いのよ」 「えェ……、結婚!!  マジでェ……」 ☆゚.*・。゚☆゚.*・。゚☆゚.*・。゚☆゚.*・。゚☆゚.*・。゚☆゚.
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