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はじまりの事情
湯島倫子はマジメに生きてきました。
高校を出て、ちょっとだけ夢を見て短大に行ったけど、夢は夢だな、と自覚させられるばかりて、思い直して地味に就職しました。
就職先は名刺とか案内状とかを印刷して納品する地味な作業所。そこの事務。
楽しいことなんか何にもない。でも超嫌なこと、てのも何にもない。
そして、土日祝日は休みだし、残業はないし。
そんなこんなでも10年くらいは直ぐ経って。
(ほんとは6年と少しです。10年はウソです。盛りました。ごめんなさい。)
そこで思い付きました。
おじいさんだらけの職場には出逢いなど決してない。
結婚相手など見つかりそうもない。
でも給料待遇は超低めだが、めっちゃ良心的で安定だ。だからいっそ先に家を買ってしまおう。
その気で探せばマンションの部屋は有りました。すぐ有りました。
交通便利至極よくて、治安も風景もまあまあ。3LDKでザックリ三千万。(中古です、もちろん。)
36年ローンで月々八万円。月給が19万だったのでよし、買えるぞ。
そこで契約したのです。
引っ越しました。
さすがに部屋は少々余ります。ひとりだもん。
でももしこのまんま彼とかできたらこのまんま、住めるじゃん?こどもができてもしばらくならば大丈夫。
そう思って自分を慰めました。不思議となんか元気もでたんです。
だけど。
三ヶ月後に会社が倒産しました。。
…どうしよう。
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