思念生

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思念生

◆思念生  今日は墓参りだ。  と言っても通常の墓参りではない。  亡くなった妻と話をしに行くのだ。  妻は、数年前に交通事故で形式上、この世から姿を消したが、「思念墓」に行けば、話をすることができる。  仕事もあるので、そんなに長居はできないが、半時間ほど妻との会話に空けてある。  20XX年・・  人間は死ぬと、その体は、「思念死」と「思念生」に分けられるようになった。 「思念死」の体は火葬されるが、まだ「思念」が残っている状態の体は「思念生」扱いをされ火葬はされない。 「思念」という概念は、近来になって医学用語に盛り込まれるようになった言葉だ。それまでは精神医学の分野でしか扱われなかったが、科学の世界にまで及ぶようになった。
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