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節子さんは「奥様も私にお任せくださっていいんですよ?」と言ったけれど、何もしないでいる事なんてできそうにありませんでした。 首を振って、それから頭を下げると節子さんはこの家の事を一つずつ丁寧に教えてくださいました。 ぬか床の場所、義直さんの好きな味の好み。 それから、彼が腕を失ってからしている補助の事。 節子さんも言霊使いの傍流に生まれたけれど言霊の力は使えない事。 その話をした後、節子さんは一旦言葉を区切って、それからとても回りくどい言い方で私に言いました。 「元気な子供を産むという大役が奥様にはありますから」 言霊使いは少ない。 その家系に生まれても私の様に使い物にならない人間もいる。 けれど、私の血を分けた子供には能力が芽生えるかもしれない。 それは私達にとって当たり前の事で、だからこそ言霊使いの家系同士で縁談をする。 そのために私はこの家に来たことはきちんと理解しています。 けれど、元々の婚約相手から半ばいらないという扱いを受けた私に本当にそんな価値があるとは思えません。 義直さんは自分の腕が無いからこそ私の様な欠陥品を押し付けられたと思っているのかもしれません。 昨日初めてあの人を見たときも、あきらめの様な、怒りにも似たそんな表情をしていました。 子供を産むよりも、もっとマシな人と結婚できるように、私が身を引くのが私の大役なのではないかと思う。 けれど、それは誰にも伝えることはできません。 力の無い人間はそれなりの生き方を、といってもそれがどんなものかさえも私にはわかりません。 こんな風に思ってしまうのは、昨日義直さんが優しかったからでしょうか。 あの優し気に私に笑いかけた人と家族を作るべきなのは私ではない気がしてしてしまう。
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