64人が本棚に入れています
本棚に追加
私は飛び出した眼球でメガネを内側から突き破りそうになった。
「はあ⁉︎ 今の流れでどうしてそう思うんですか⁉︎ 信じられない!!」
「いや、誰だってそう思うよね」
「思いません!!」
「っていうか付き合ってって告白したよね」
「してません!! 勝手な思い込みをしないでください!!」
私はゲンコツを振り回して怒った。
「大神くんのバカ! 嘘つき! もうあなたなんて大嫌いです!!」
私は屋上から出ていこうと踵を返した。
すると、大神くんの手が私の手首をぎゅっと掴んだ。
「待って、高橋さん!」
ドキッと心臓が弾んで、私の体が一瞬上下したような気がした。
おそるおそる振り向くと、やや赤い顔をした大神くんが、犬のように可愛い瞳で私を見つめていた。
「な、なんですかっ?」
「あのさ……実は、俺……ずっと黙っていたけど、本当は高橋さんのことが好きなんだ! 俺と付き合ってください!!」
「……!」
真に迫った表情で手を震わせている大神くん。それを見た私は──。
「嘘ですよね。はいキタ、また嘘〜! もう信じないから!! さよなら!!」
「ええええええええーーーっ!!」
なんで⁉︎ と叫ぶ大神くんの手を振り払うと、泣きながら屋上を走り去った。
「ぐすっ……いくらなんでもあんな嘘つくなんて、ひどい……。本当は私、大神くんのこと好きだったのに……!」
もう何も信じられない。
その後、何度か大神くんの家に行って宇宙船を見せてもらったり、闘牛を倒した記念にもらったという牛ヒレ肉でバーベキューをしたり、バック宙からの土下座(ローリング土下座リバース)や窓から飛び込んできてスライディングからの土下座(フライング土下座ウインドウトゥーザアーススライド)などを100万回ずつ見せてもらい、ようやく私たちは少しずつ打ち解けた。
でも、大神くんが何度も言ってくれる「好き」だけは、何故かいまだに信じられずにいる。
終わり
最初のコメントを投稿しよう!