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「はーっ、マジ今日はヤバかったな。あやうくツノで肋骨やられそうになったし。ラーメン屋のおじさんが赤い布を投げ込んでくれなかったら今ごろ病院送りになってたよ」
爽やかな風が吹き渡るお昼休みの屋上で、大神くんは今朝の遅刻の理由についてまだそんな嘘を重ねている。
彼のクラスメイトでクールな才女と知られているこの私──高橋ユリは、薄いフレームのメガネ越しに彼を鋭く見つめながら、腕組みをして言った。
「大神くん。私があなたをここに呼び出した理由、分かってますよね?」
「えっ? ちょ、待ってよ高橋さん。そんな、急に言われてもねえ……告白?」
「違います」
「違うの⁉︎」
照れ顔から一転、青くなる大神くん。
表情が犬のようにコロコロ変わって可愛いといえば可愛いけど、そんな見た目に私は騙されたりしない。
「私は風紀委員として、これ以上あなたの遅刻を見過ごすわけにはいきません‼︎」
私は人差し指をフェンシングの剣の先のようにしならせ、大神くんの鼻先にビシッと突き立てた。
「あんな大嘘で遅刻をごまかそうとするあなたのやり口! 見事なエクストリーム土下座でなんだか許しちゃおっかな? って気にさせるあざとい手口! その猫耳っぽい可愛い寝癖とか、もう、何から何まで許せません! 好きです!!」
「えっ、今告白して……」
「してません!!」
大神くんは目を丸くした。
「言っておきますが、私はあなたのこと一個も褒めてないですからね!!」
「えっ、でもさっき見事な土下座とか、可愛い寝癖とか……」
「言ってません! 話をすり替えないで!!」
大神くんは納得いかない顔つきで黙った。
「とにかく私は、あなたの大嘘つきなところが許せないの!! どうしてそんな大嘘をつくのか、ちゃんと私に説明してください!」
私の真剣さが伝わったのだろうか、彼はゆっくりとうなずいた。
「……分かった。信じてもらえるかどうか分からないけど、話すよ」
大神くんは真面目ぶった顔つきで屋上の柵の向こうに広がる空を見つめ、おもむろに告白した。
「実は俺……宇宙人なんだ」
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