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どこからともなく吹いてきた風が大神くんの寝癖を揺らす。
「銀河系のとある惑星からちょっと自分探しの旅に出て、小惑星イトカワの軌道を使って地球に流れ着いたんだけど、時差ボケがまだ治らなくてつい遅刻しちゃうんだ。こっちの環境に慣れるまではあと三年くらいはかかるだろうと予測している」
大神くんが振り向いてそっと微笑む。
「これで納得してくれた?」
「してません!!」
「えっ?」
「えっ? じゃないでしょ。意外そうな顔しないでください! 可愛いすぎるのでやめてください!」
「えっ? 今、褒めて……」
「褒めてません!!」
大神くんはますます納得がいかない様子で首を傾げた。
「どうしてそんな嘘を平気でつくんですか? 信じられない! 可愛ければなんでも許されると思ってますよね? 違うから! 世の中そんなに甘くないから! 宇宙人だからそういうところ分かんないかもしれないけど、地球人ってそういうのマジ厳しいから!」
「あれ? 今、俺の話信じて……」
「信じてません!!」
私は大神くんの態度に失望し、両手で顔を覆って泣き崩れた。
「どうして嘘ばっかりつくんですか? 私、嘘つきは大嫌いなのに!!」
「えっ? でもどちらかと言えば高橋さんの方が嘘ばっかり……」
「ついてません!!」
大神くんは困ったように腕を組む。
「とにかく、宇宙人だろうとなんだろうと遅刻は許せません! 時差ボケするなら私が毎朝起こしに行っても構わないっていうか、一緒に通学しても構わないっていうか、そのまま付き合う流れになっても致し方ないというか、むしろそうなれ!」
怒りにまかせてヒステリックに叫んだ時だった。
大神くんは可愛い頬をフニャッと緩ませて言った。
「あのさ。間違ってたら悪いけど……」
「はい?」
「高橋さん、俺のこと好きだよね」
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