大神くんの言うことなんて信じない!

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 彼がやってくるのは、いつも授業開始のチャイムが鳴った直後だった。 「だはああっ!!」  教室に入ってくるなり、肺に入っていた全ての息を吐き出し、彼は床に膝をつく。  全速力でやってきましたと言わんばかりの大粒の滝汗と、荒々しい呼吸。乱れた黒い髪には二箇所に変な寝癖がついていて、見る角度によっては猫耳がついているようにも見える。 「か、紙一重か……!」 「いや、遅刻だけど」  彼は授業に間に合ったつもりでいたらしいが、出席確認をする朝のホームルームまでに来ていないと遅刻になる。紙一重ではない。 「おい、オオカミ。今日は何があったんだ?」 「大神(おおがみ)です、先生。オオガミ」 「分かってる。それより、先生は入学以来毎日お前が遅刻してくる理由について聞きたいんだが?」  呼吸を整え、彼は立ち上がって背筋を伸ばす。  そして何故かドヤ顔でこう言った。 「商店街で暴れていた闘牛と戦ってました、すんませんっした!!」  嘘つきオオカミ少年とみんなから呆れられている彼の名は、大神ヒロシ。  得意技は直立姿勢から突然くりだされるジャンピング土下座である。    
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