6.手加減なんてしないよね

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「ーーさ、出来たわ。行きましょう」 「………えこれどうなってるんですか触るの怖い」 「触っちゃダメ。崩れちゃうわ」 僅か数分で出来上がった髪は、およそ俺の技術では再現不可能であろう編み方がされていた。最後にいつもの黒リボンでまとめてもらい、控え室を出る。 スタジアムでは、ちょうど運動部のリレーが終わったところだった。次は文化部で、最後に委員会+生徒会と、職員が走る。 この競技は組関係なく走り、勝敗にも影響はないため真面目に速さを競うのはごく一部だけだ。バトンの代わりに美術部は筆、家庭科部はしゃもじ、吹奏楽部に至っては自分の楽器を抱えている。第一走者はフルートで持って走る分には平気だと思うけど、次の人、チューバだ。大丈夫なのか? せっかくなので叶恵さんと一緒に応援席に行く。これが終わったら走るし、スタジアムに降りやすい場所が良い。 「あれ、珍しい組み合わせ…でもないか。さっきぶりですね、先輩」 「あら、あなただけ?」 「ハイ、一緒にいた人、ことごとく走るので。彩くん、その髪、可愛いね」 「ありがとうございます」 サラッと可愛いと言える男子、点数高いな。俺が女であれば。 一人、のんびりと観戦していたのは詩音だった。ほとんどの生徒はグラウンドまで降りて応援しているので、周りには数えるほどしかいない。その彼らも、“黒百合姫”に声をかけるのは憚られるようで。 「下に行かなくて良いんですか?」 「んー、暑いし。あ、生徒会の番になったら降りるよ、応援できるの僕だけだし」 そうなのだ。生徒会メンバーは五人、走者は四人。厳正なるじゃんけんの結果、詩音の一人勝ちだったので自動的に他の四人は走ることになる。 「叶恵さんも走るんですか?」 「ええ、委員長だし。菫も走るわよ」 「…へぇ。ちなみに、何番目ですか?」 ……詩音の目が、心なしか暗く光ったような。 「三番目。アンカーはアタシよ」 「委員長アンカーは定番ですもん、ね?……詩音さん?」 言葉の途中、詩音が俺の肩を掴んだ。痛い痛い、食い込んでる、指食い込んでるから! 「ぜっっっっったいに負けないで」 生徒会第三走者は俺。 「………ハイ」 顔が怖い。頷く以外に選択肢なんか無かった。
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