6.手加減なんてしないよね

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目を見開く一年二人。眼球が落ちそうなくらいかっ開いてる。そりゃ驚くよな。バイトしそうなタマじゃないもん。必要も無いし。 「どうやって料理長の審査に合格したんですか?」 「…んっ、と」 顎に手を当て、思い出す仕草をする。唇がきゅっと結ばれた。 「……合格、というか。スカウトされた」 「それは初耳です」 「それな〜」 「同じく」 「…あれ、言ってなかった?」 こくり。頷きが三つ。 「……ごめんね?」 首こてしながら謝罪するなあざとい萌えた。これだからわんこは。 一年生はまたもや目を見開いている。落ちる落ちる。手を伸ばし、目の前で振るとハッと我に返った。 「すみません、びっくりしたので」 「あの料理長からスカウト…?やっぱ“五色”様、色んな意味で規格外だわ……」 「宮下」 「てっ、あ、すみません。情報量多過ぎてキャパオーバーしてました」 樺倉くんが頭を小突き、ぺこっと宮下くんが頭を下げる。良いコンビだな。 [お食事中のみなさーん、あと十分で午後の部始まりますよー] 八神さんの声でアナウンス。 「次、応援合戦でしたよね」 「そろそろ行こうか」 「二人とも、いっぱいお話聞かせてくれてありがとね〜」 「あっ、こちらこそ!!ご一緒させていただいて、ありがとうございました!」 「ありがとうございました」 「……ばいばい」 各々で別れを告げる。宮下くんは最後のばいばいに綺麗に撃ち抜かれていた。
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