6.手加減なんてしないよね

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[っぐす…すごかった…ずび、本当にすごかった…] [ハイこの通り先輩が使い物にならないので次のリレーは八神が実況をたんと、] [バーカ誰がお前に譲るか!バーカバーカ] [……マイクに罵声を乗せないでくれます?あとボキャ貧が深刻ですが、ああああちょっと!顔ぐしゃぐしゃじゃないですかせっかくキレーな顔してんだからちゃんと整えて!ほらティッシュ!] 「根明オタク×根暗オタク…食える」 妄想の餌食にされてるぞ、腐男子二人。 ボロ泣きなのは何も葉山さんだけではなく、そこらじゅうに目を赤くした生徒が居た。今年の舞は例年以上の出来だったようで、先生たちも興奮気味に感想を話していたのを見た。 …まぁ、悪くはなかった。 「おい」 「…茜、様?」 あっぶね、様付け忘れるとこだった。突然出てくんじゃねぇよバカネ。 「今失礼なこと考えてただろ」 「んなわけ無いじゃないですか。…お疲れ様でした。みなさん感動されてましたよ」 急いで着替えたのか、髪が少し乱れている。手を伸ばし、整えてやると目を丸くされた。 「…何、企んでんだ?」 「はい?」 今度は俺が目を丸くする番だった。企んでるって、何を? 茜はきょとんとした俺に、怪訝そうに眉を寄せる。 「俺は琥珀や菫じゃねぇぞ」 「……???すみません、何を言ってるのかよくわかりません」 Si◯iみたいな言い回しになったが、それよりも本当に何を言われてるのかわからん。茜が琥珀でも菫でもないとか、当たり前じゃないか。 疑問符ぐるぐる状態の俺に、茜はため息を吐いた。もしかして呆れられてる?心外だ。 「だから、」と大きな手がぽふ、と頭に乗る。 「何で撫でるんだって訊いてんだよ」 「…………あー、そういうことですか」 「何で俺が説明してんだバカ」 やっと合点がいく。髪の毛直したのを、撫でられたと思ったんだな。俺が茜を撫でるなんてしたことないから、怪しまれた訳だ。 「だからといって何か企んでるって発想になります?」 「お前はそういう奴だろうが。……あー、もういい。俺の勘違いってことはわかった」 髪の間から覗いた耳が、薄っすら赤くなってる。 「……」 「てっ、おい、何すんだこのやろ」 「あっ、ちょ、待って、ぐしゃぐしゃしないでください!」 「お前が先に手、出したんだろうが!」 「結ぶの大変なんですよ!?」 「自業自得だ!」 なんとなくデコピンした仕返しが、髪をぐしゃぐしゃにされるという。痛みはゼロだけど精神的ダメージが入った。直すの大変なんだってば。 「ーー何いちゃついてるの?」
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