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[っぐす…すごかった…ずび、本当にすごかった…]
[ハイこの通り先輩が使い物にならないので次のリレーは八神が実況をたんと、]
[バーカ誰がお前に譲るか!バーカバーカ]
[……マイクに罵声を乗せないでくれます?あとボキャ貧が深刻ですが、ああああちょっと!顔ぐしゃぐしゃじゃないですかせっかくキレーな顔してんだからちゃんと整えて!ほらティッシュ!]
「根明オタク×根暗オタク…食える」
妄想の餌食にされてるぞ、腐男子二人。
ボロ泣きなのは何も葉山さんだけではなく、そこらじゅうに目を赤くした生徒が居た。今年の舞は例年以上の出来だったようで、先生たちも興奮気味に感想を話していたのを見た。
…まぁ、悪くはなかった。
「おい」
「…茜、様?」
あっぶね、様付け忘れるとこだった。突然出てくんじゃねぇよバカネ。
「今失礼なこと考えてただろ」
「んなわけ無いじゃないですか。…お疲れ様でした。みなさん感動されてましたよ」
急いで着替えたのか、髪が少し乱れている。手を伸ばし、整えてやると目を丸くされた。
「…何、企んでんだ?」
「はい?」
今度は俺が目を丸くする番だった。企んでるって、何を?
茜はきょとんとした俺に、怪訝そうに眉を寄せる。
「俺は琥珀や菫じゃねぇぞ」
「……???すみません、何を言ってるのかよくわかりません」
Si◯iみたいな言い回しになったが、それよりも本当に何を言われてるのかわからん。茜が琥珀でも菫でもないとか、当たり前じゃないか。
疑問符ぐるぐる状態の俺に、茜はため息を吐いた。もしかして呆れられてる?心外だ。
「だから、」と大きな手がぽふ、と頭に乗る。
「何で撫でるんだって訊いてんだよ」
「…………あー、そういうことですか」
「何で俺が説明してんだバカ」
やっと合点がいく。髪の毛直したのを、撫でられたと思ったんだな。俺が茜を撫でるなんてしたことないから、怪しまれた訳だ。
「だからといって何か企んでるって発想になります?」
「お前はそういう奴だろうが。……あー、もういい。俺の勘違いってことはわかった」
髪の間から覗いた耳が、薄っすら赤くなってる。
「……」
「てっ、おい、何すんだこのやろ」
「あっ、ちょ、待って、ぐしゃぐしゃしないでください!」
「お前が先に手、出したんだろうが!」
「結ぶの大変なんですよ!?」
「自業自得だ!」
なんとなくデコピンした仕返しが、髪をぐしゃぐしゃにされるという。痛みはゼロだけど精神的ダメージが入った。直すの大変なんだってば。
「ーー何いちゃついてるの?」
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