1.洋介、最近の悩み

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1.洋介、最近の悩み

 また呼び出し音が鳴っている。スマホの画面をチラ見して、呻いた。  俺、高木(たかぎ) 洋介(ようすけ)には悩みがある。原因はこの着信のせいだった。  相手は実家にいる年老いた両親だ。用件は簡単に想像できる。 「親戚のみよ子ちゃん、結婚したってよぉ」 「今年もう33歳やろ。洋介、お見合いせんか」  始まった。ここからが長い。  結婚なんてする気ないと、ちゃんと返事をせず、なし崩しにしてきた俺も悪い。だがしょっちゅう催促されるのは(わずら)わしい。  試しにお見合いしてみたらどうかって?  無理。俺は超がつくほど奥手なんだ。母親以外の女性と、2人きりになるなんて考えられない。  けれど両親の期待をないがしろにし続けるのも、結構ストレスが溜まる。だから困っているんだ。
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