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4.洋介、初めてのお見合い
「本日はお日柄も良く――」
お見合いには仲人なる人物がいるらしい。だがそんな者の映像まで用意する暇はない。音声だけでごまかした。
「高木 洋介です。ね、年齢は32歳」
目の前に誰もいないのに、なぜ緊張するのか、俺よ。
「高木 花と申します。29歳です」
相手の名前は好きなアニメのヒロインから拝借した。
「ベッピンさんだねえ!」
「洋ちゃんには、もってぇねえ! ハハっ!」
その声、相手に筒抜けなんですけど。おそらくTVを観ている感覚に違いない。
『今日は天気が良いですね』『桜が見頃ですね』。そんな当たり障りのない会話が終わった後、親父が爆弾を放り込んできた。
「じゃあ、先にお昼にしようかね」
お昼……え、お昼!? 予想外の言葉を聞いて、俺はあわててネットを検索した。
『伝統的なお見合いの席では、軽く挨拶をしたあと、昼食の時間が設けられます』
マジか!? 見合いって1時間ぐらい適当に会話して、解散ってパターンが普通じゃないの? っていうか料理なんてまったく用意してないし!
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