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「あっぶねー!」
バタバタと教室に走り込んできた朔。席に着くやいなや、腕で額の汗を拭っている。
朔の隣の席である澪は、ちらりと視線を向けた。澪の前の席に座り喋っていた佐藤璃々子も、澪から朔へと視線を移した。
「おはよ。朔だけ真夏みたい」
「ほんとだねぇ」
「五月でこの汗は俺だけだな」
なぜかドヤ顔をしている朔に、澪は大袈裟に冷ややかな視線を向ける。
璃々子が自席に戻って行った数分後、一時限目の先生が入ってきた。
「まじで暑い」
「どんだけ走ったの」
「もう全力ダッシュよ」
一限目はおじいちゃん先生。
余程大声で話さない限り注意されることはない。一限目だと言うことも相まって、教室には緩んだ空気が流れていた。
澪も机の上に教科書は置いていたが、開くこともなく朔と話す。二人は一番後ろの席だった。
「あ、そうだ聞いて。今日、久我君と朝一緒に行ったんだ。いいでしょー」
「はあ?なんでつっちーが」
「たまたま会っちゃって」
「クッソ。俺が遅刻したばっかりに」
佑を取り合うというネタは二人の定番だった。
朔はわざとらしく大袈裟に悔しがる。
「俺だってな、今日佑と一緒に帰るから!」
「あーあ、朔が明日も寝坊してくれたら、久我君と一緒に行けるのに」
軽口を叩きながら、澪は当の本人の背中を見つめた。
一番前の教卓の隣という特等席に座る佑は、既に眠いのか机に伏せてしまっていた。
ーー寝るのはや。
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