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嘘をつかないと出られない部屋
目を開けると、突き刺すような光が襲ってきた。あまりの眩しさに頭が痛くなる。眩しいと感じたのは別に卓上ライトを顔に向けられていたわけではなく、部屋の壁も床も天井も全てが真っ白で、とにかく光を跳ね返すからのようだ。酔いもあって頭痛が3割ほど増してる気がする。
服装は居酒屋にいたときのままだった。ロンTにジーンズ、コート。財布は……ちゃんとポケットに入ってる。スマホも無事だ。ただし圏外。
「……おい、宇田川。起きろよ」
隣に倒れている宇田川を揺すってやると
「ここはどこだ?」
さっきの俺と同じように顔をしかめながら体を起こすと、同じようにあたりを見回した。
「さっきまで居酒屋にいたはずだろ。結構飲んで……それでふっと意識がなくなったんだけど、気づいたらここにいた。ってかんじ」
「いや、お前が潰れたのは見てたから。……俺もいつの間にか酔いが回ってたのかな」
俺の一人暮らしの部屋と同じくらいの、6畳程度の広さだ。銀の取っ手のついた真っ白いドアが一つ。よく見ると、ドアの隙間に紙が挟まっている。拾ってみると、そこには印刷された文章が1行。
「嘘をつかないと出られない部屋、だって」
一体何の冗談だ。ドアノブをひねるが確かに開かない。テレビ番組なんかであるドッキリのたぐいだろうか。だとしたら普通の大学生を放り込んでも仕方ないだろ。もし人違いなら迷惑な話だ。
「あー、なるほど」
宇田川が急に頷きだした。ああここね、来たことある、みたいな空気を出している。
「え、何、知ってんの?」
「二次創作とかのイラストでたまに見かけるアレにそっくり。ほら、キスしないと出られないとか、エッチしないと出られないとか、どちらかか死なないと出られないとか、そういう脱出ミッション系の部屋」
「うぇ、世の中にはそんな恐ろしい部屋があるのかよ。よかったー俺たちがいるのがイージーモードな部屋で」
「たしかにね」
なんで二人ともこの意味不明なシチュエーションをすんなりと受け入れているのか。それはひとえにアルコールによって脳みそが柔らかくなっていたからだろう。
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