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とにかく嘘をつけばいいんだろう。簡単じゃないか。ドアに向かい合いあうと
「そうだな……猫ってワンワンって鳴くんだよね」
さっさとこんなところから出よう。超適当な嘘を付き、俺はドアを開けようとした。が、びくともしない。え、なんで? この嘘だめだった?
「あー、じゃあ、今年のクリスマスは中止になっりましたー」
非モテの叫びみたいな嘘をついて、もう一度ドアノブを回す。動かない。
「じゃあ……ずっと黙ってたけど、俺、実は女なんだ」
死ぬほどくだらない嘘だ。ドアノブをひねる。ドアは……びくともしない。
「いや、おかしいだろ。なあ、どうして開かないんだ? あの紙に書いてあるのが嘘だったとか?」
部屋に文句をつけ始めた俺を、宇田川は呆然と指さしてきた。おいおい失礼だぞ。
「なあ、園田、それ……」
「え?」
視線を下に落とす。そこにはあるはずのない2つの膨らみがあった。おそるおそる触れるとムニッと柔らかい。胸騒ぎが確信に変わっていく。
なあ、俺さっきなんて言った?
『実は女なんだ』
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