クリスマスソング

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(3)  ここ数日、宇田川に会わない日が続いている。が、やつのうわさだけは光より早く伝わってきた。 「モトカノとデートしてもう一度改めてふられたらしい」 「めっちゃキレイにビンタされてたって」 「マジか、すごい修羅場じゃん」 「前の前の彼女にしつこくつきまとってるって聞いたけど」 「最寄り駅で待ち伏せしてたらしい」 「うわ、必死すぎ」 「クリスマスとはかくも人を変えてしまうものなのか」  想像がつかなすぎて怖い。  俺はこの世界を元通りにしたつもりでいたけど、完全に戻ってはいないのかもしれない。以前とよく似ているけどちょっと違う、みたいな。  そういえば確かに、スマホでのやり取りは残ってなかったけど、女物の衣服だけは俺の部屋にしっかり残ってるんだよな。UFOキャッチャーで取ってもらったあの景品も。キーホルダーはリュックに付けたままだけど、衣服はどうすればいいのかわからなくて部屋の隅に積んである。  あんまり考えすぎると眠れなくなりそうだからこの辺にしとこう。俺は男としての人生を全うしていくつもりだし、アイツはアイツの道を行く。それだけだ。その道が周囲からどんなにへんてこに見えても、何も言う資格はない。  一つ良かったのは、分かりやすいストーリーの映画しか見てなかった俺が、ちょっと難しそうな映画に興味を持ち始めたってことだ。あの日々は、クリスマスのイルミネーションに彩られて、静かに思い出になっていく。幾つかの痕跡だけをわずかに残して。
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