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「何があった? って聞いてもいい?」
二人分のカフェオレをテーブルに置き、宇田川の隣りに座った。
「チカに連絡とって、会って、振られた」
「ああ、元カノね。二度も丁寧にフラれるって何なの」
「それから、ユリとも会って、振られた」
「前の前の彼女、だっけ。うん、何してんのマジで」
「そのあと、カナミと会って……とりあえず挨拶だけした」
「何それ」
「もう彼氏がいたから」
「……いったい何なんだよお前は。わざわざ元カノ巡りして。さすがの俺も必死すぎて引くぞ」
あ、ついつい強めの突っ込みが。恐る恐る顔色をうかがうが、特に食らってはいないようだった。
開きっぱなしのパソコンを見つけて、宇田川が意外そうな顔になった。
「このインタビュー記事、俺も読んだよ」
「あ、そうなんだ。結構面白いよな、この映画」
ぐいっとパソコンの向きを変えて、二人でのぞき込めるようにする。
「最近たまたま見たんだけどさ、隠された意味とかが結構張り巡らされてるって教わってからは普通に面白くなっちゃって。ネット記事とか見るタイプじゃなかったんだけどついつい見ちゃうんだよね」
「だよな。……ちなみに、その映画を撮った監督のひとつ前の作品があって、それも今回の映画につながる重要なキーワードが隠されてるんだけど……」
「あ、それも見たわ、俺。すげーよな、時間がたつのを忘れて集中するのってなかなかない経験だよな」
「眠くならなかった?」
「まあ、深夜だったのもあってちょっと眠くはなったけど、めっちゃうまい解説を聞きながらだったから耐えられたわ」
「そうか」
それから再び沈黙が部屋を支配した。そういえば、そもそもなんでこいつは俺のうちに来たんだ? 家の住所、教えたことあったっけ。
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