日引と水島

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日引と水島

ぽかぽかと太陽の日差しが差し込む和室で、日引は一通の手紙を読んでいた。 テーブルの上には、手紙が入っていた封筒とお茶に大福が一つ。 この大福は二日前に水島が買って来た物で、中に入っている餡が白餡と言う少し変わった大福だ。大福を見せながら「お取り寄せで買ったんです。凄く美味しいらしく。しかも、中に白餡が入ってるそうですよ」と自慢気に話す水島に対し、小豆の餡の方が好きな日引は、露骨に嫌な顔をしたが食べて見ると程よい甘さが中々に美味い。 箱に十二個入っていた大福も、水島に一つだけやり今目の前にある大福で最後となる。その最後の大福を渋いお茶と共に堪能しようとした時、水島が手紙を持ってやってきたのだ。 その前にまず、日引と水島をご存じない方に簡単にご紹介しよう。 日引は七十をとうに超えているように見えるお婆さんだが、詳しい歳は誰も知らない。 幼い頃から、人ならざる者が視えそのお陰でかなり苦労したと聞いている。結婚歴はないそうだが、交友関係は幅広くその全ては日引の能力に世話になった人らしい。 能力と記述したが実際の所、お祓いや浄化は出来ないという。 日引曰く「そんなもの出来なくてもいいのさ。要は何故そこにいて、何故悪戯をするのか。原因が分かればいい。その後の事は生きている人間が何とかするしかないのさ」という事らしい。 次に水島。 この水島はまだ二十代の青年で、不動産業に勤める営業マンである。少々痩せぎすな所はあるが、イケメンの好青年。学生の頃から無類のオカルト好きで、好きが高じて不動産業に飛び込んだと聞いている。 「そうです。事故物件とかすぐに行くことが出来ますからね」 ・・だそうだ。 日引との接点は、水島がやらかした事で日引に助けられたことがきっかけだと聞いている。まぁ、根がおっちょこちょいで好きなものに対しては後先考えずに突っ込むタイプの男だ。何か良からぬオカルトまがいな事で迷惑かけたのだろう。 何はともあれ、水島は日引のその能力に興味を持ちコバンザメのごとく側にいる男だ。日引としても良い使い走りに出来るので好都合だろう。 では、物語に戻る。
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