48人が本棚に入れています
本棚に追加
「いやぁー参っちゃったよ。子供には。」
と大きな手で頭をボリボリと掻きむしりながら笑う熊沢さん。
「ですね。無邪気ほど怖いものはない。」
手に持ったビールの缶を揺らしながら笑い返した。
「あはは。そうですね。香帆さん逃げるように寝かしつけに行っちゃいましたね。」
2階ではまだバタバタと子供達の走る音がする。
「まだ19時ですよ!」
2人で笑い合う。
そのあとも男2人で趣味だったゴルフの話や会社の話で会話が弾んだ。
お互い敬語もときどき挟むが、昔からの知り合いかの様に気兼ねなく話せているのが不思議だ。
きっと熊沢さんのガッチリした体型に温厚な性格、そして太い声色がそうさせているのかもしれない。
「でも今日は得しちゃったな。香帆さんみたいな美人の旦那さんしか知らない情報を知れて。」
「ははは。お気に入りの熊さんにそれ言われたら、香帆きっと喜ぶと思います。」
「いや、気持ち悪がられるでしょう。」
「あはは。そうかもしれませんね。熊さんはパイパン好きなんですか?」
「どちらでもなかったですけど、香帆さんのあの綺麗な顔にとパイパンのギャップはたまらないなぁ。」
「熊さん意外とスケベですね。」
「あはは。そりゃ僕だって男ですから。人並みには。」
「熊さん、寝取られって知ってますか?」
思い切って唐突に切り出した。
「えっ?……ネト……ラ……レ?…何それ?」
僕は大きな丸々とした目でキョトンとした熊さんに事細かに伝えた。
「なるほどねー世の中には変わった性癖があるんだね。」
「僕がそれなんです。」
意を決して熊さんに伝えた。
「えっ…ええっ!?」
「まだ実現したことはないですが……。」
「香帆さんが他の男とセックスすることで興奮するってこと?」
「はい。…きっと興奮するんだと思います。軽蔑しました?」
「いや…軽蔑なんてしないよ。人それぞれ色んな人がいるしね。」
目をしっかり見ながら落ち着いてさらっと言葉を発する熊さんに安心した。
「だから熊さんがチラチラ香帆のカラダを見てるのも嬉しいんですよ僕は。」
悪戯顔で熊さんを見た。
「………っあはははは。参ったなー!バレてましたか!」
椅子に仰け反り頭を右手でボリボリ掻く。
「ええ。うちの香帆はサービスタイム多いでしょう。」
「そうだね。ちょっとガードが緩いところがあるから助かってますよ。」
「これからはもっといやらしい目で香帆のこと見てやってくださいよ。」
「あはは。それは嬉しい提案だなぁ。香帆さんにはバレないようにしなきゃね。」
「……熊さん。」
「ん?……なに??」
「……うちの香帆と…寝て欲しいと言ったら…困りますか?」
「え?…ぇえっ!?」
熊さんの目から視線を離さず返事を待った。
「……いやいや!それはダメです!」
焦りを見せながら答える熊さん。
「香帆がいいならどうですか?」
「それは…。」
ガチャッ。
リビングの扉が開き
「ふーーっ。3人とも走り疲れて割と早く寝てくれたよ。」
と言いながらキッチンへ行きお酒を作りソファに戻ってきた香帆。
サテン生地の上下ブラウン色のパジャマ姿で、座る位置は今日もやっぱり熊さんの隣。
「何の話ししてたの?」
一口お酒を口に含んでから2人に問いかけた。
「香帆の下の毛が無いってことで盛り上がってたよ。」
「もーーーやめてよーー。」
吹き出しながら膨れ顔をする香帆。
そしてそんな香帆を優しく見つめニコニコ笑っている熊さん。
香帆がすぐ話をすり替えようとするがしばらくすると話を下ネタに戻す俺。
芽里ちゃんの言葉もあり、お酒もあり、再燃した寝取らせ癖を実現させたい一心だった。
何回目かの時に
「まぁまぁ。香帆さんも困ってるじゃない。」
そう紳士ぶり俺を諭す熊さんに少しムッとした。
「ふふふ。熊さんありがとう。」
にっこりと熊さんを見る香帆。
「で本当なの?」
太く優しい声で切り返す熊さん。
「もぉ!熊さんまで!スケベ〜。」
「あははは。」
笑いながら香帆を見つめる熊さん。
「…そんなことが気になるんですか?」
「それはもちろん。香帆さんのような美人なら。」
ストレートに恋愛中の少女のように俯き照れる香帆。
「見せてあげたら?」
「えっ?…」
顔を見上げた香帆。
驚きの目でなくトロンとした目をしていた。
今日はこのままイケる!そう確信しかけた時。
「いや。ダメだよ。香帆さんのそんな大切なところを会って数ヶ月しか経ってない僕なんかに。」
そういう熊さんに合わせ香帆も、
「そうだよね。亮ちゃんもう変なこと言わないで。」
と僕を睨んだ。
「こんな美人の奥様をもったいないよ。」
熊さんのその言葉と同時に計画が崩れた。せっかくのチャンスを不意にしてしまった。
そして結果、自分の株を上げ僕を悪者にした熊さんに腹が立った。
最初のコメントを投稿しよう!