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お嬢様は結局、貝殻とあの美しい片眼の猫のお墓を作ったその日に、私の腕の中で死んでしまいました。私を旦那様の弟様へ廃棄のような形で引き継いだ時、約束をしたではありませんか。何があろうとあの子を守ると。しがない執事でありロボットである私を、愛してくれたお嬢様を、守り通すと。私は声を奪われました。行動することさえできなくなりました。しかしお嬢様のご自身の願いによって、私はもう一度、目にすることができたのです。全てを愛する、美しいお嬢様の姿を。人里遠く離れたこの辺境の地でさえ、言葉も文化もないこの地でさえ、お嬢様は森羅万象を愛することを忘れませんでした。マナティに似た、あの忌まわしき弟様のことまでも、救おうとしていたのかも知れません。
「起きて、バウワイズ」
彼女は私を起動するたの音声認証の文言を、覚えていてくれたみたいです。そして微動だにしない私へ、必死にその言葉を投げかけていたのです。
ありがとうございます、お嬢様。私を愛して下さって。
――メリィクリスマス――
小さな頃に「ずっと一緒だよ」と言ってくれた言葉は、今こうして、白骨化していくお嬢様を見つめながら、ああ本当に、約束を叶えて下さっているのだなぁと噛みしめています。いくら文明の利器と言えど、私もそろそろ電源が切れてしまうでしょう。届くのなら、旦那様、メモリ内のこの思考データを遺言とさせていただきたい。ロボットの遺言なんて可笑しいでしょうか?ですが、うそつきの人間よりは、正直であると信じています。それでは。
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