少女はエンドロールを

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 私の暮らすこの場所は、山に囲まれた静かな街だ。  子どもの人口は年々減少している。  そんなわけで、私が通っていたこの桜ヶ丘高校が、隣の市の高校と合併するのだと決まったのは去年のことだった。  そして、高校の校舎が取り壊されるのが今年の2月16日に決まった。  だから、私たち今年の卒業生たちは、例年より2週間ほど日にちを早めて、卒業式を迎えた。  在校生たちは翌日から新しい校舎でこれから先も過ごしていかなければいけないというのに、私たちだけ校舎とともに「それじゃあ、さようなら」って終わりにして綺麗に去って行くなんて。  あまりに都合良くまとまり過ぎていて、なんだか吐きそうだ。  鍵のかかっていない校舎には、思っていた通りすんなり入れた。  厳粛な卒業式の後、生徒会主催の後夜祭のようなものがあったせいで、床には紙花やクラッカーのゴミなどが散乱していた。  窓から校庭をのぞくと、キャンプファイヤーの燃え残りが見えた。  すべての場所を見てまわった。最後の別れを惜しむように。  何度も通った図書室。ピアノの音が綺麗だった音楽室。ガラス張りの渡り廊下。あんまり好きじゃなかった職員室。  階段を上り終えると、懐かしい場所が視界に入る。  3年2組、私の教室だ。  窓際の前から2番目、そこが私の席。    ずっとここに座って過ごしてきた。  彼が死んでしまった、あの日からずっと。
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