少女はエンドロールを

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 若宮透、彼と出会ったのは小学5年生のことだった。  出会ったと言っても、顔見知り程度だったけど。  私は絵に描いたような真面目な生徒。  彼はクラスのお調子者。  「苦手なヤツだ」くらいにしか思ってなかった。  話したことなんてなかったし、ましてや目を合わせたこともなかった。  ただのクラスメイトの1人。それだけの関係。  その後、中学に進学とともに彼は隣町に引っ越していった。  だから、もう会うことはないと思っていた――――高校で再会するまでは。  ――あれ、もしかして笠原?  声のするほうを向くとそこにはあの若宮透がいた。  背丈もずいぶんと伸びて、髪の色も染めてたけど。少年のように無邪気に笑った顔には、あの頃の幼さが残っていた。  ――こっちに戻ってきたんだね。私のこと覚えてたんだ。なんか意外。  ――もちろん、覚えてるって!  彼はおかしそうに笑いながら答える。  ――話したことなかったでしょ?  ――まあ、そうだね。でも、俺は覚えてるんだ。  真っ直ぐに私を見つめて言う彼。なんだか急に恥ずかしくなった。  ――そう。  ――これから1年間同じクラスだね。よろしく。  ――よろしく。
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