#1 闇に嗤う獣

10/10
前へ
/10ページ
次へ
 侵獣の身体そのもの、たとえばマンティコアの銅色(あかがねいろ)の毛皮もまた、工芸品や、時には衣服の材料として珍重されている。 「んー、持って帰るのはムリそうだな。こんな所で解体してる時間なんかねーし」 『当然だ。日中に回収に来ればいい。トラッカーを落とそう。そうすればまた、ここに戻って来れる』 「あ、忘れてきちゃった」 『なら、こちらで投下する』  上空を漂うドローンが、赤尾から少し離れたところに小さな塊を投げ落とした。 「それじゃ、案内よろしく」 『無論だ。帰るまでが遠足だからな』  軽口を叩き合いながら歩き出す。  粘つくように濃い闇と、嗅ぎ慣れない匂いに満ちた森では、相棒のやかましい声が殊更に心強く感じた。 (続)
/10ページ

最初のコメントを投稿しよう!

30人が本棚に入れています
本棚に追加