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プロローグ
私、冬葱静はちょっと前に死にかけた。
死にかけた原因は、そう、暴漢に襲われた。
一応肋か何かを骨折し、肺の25%が潰れた。
で、一応手術とリハビリが終わって帰宅した。
「あ、おかえり!」
明るい感じの笑顔で挨拶したこの子は冬葱霰。典型的な日本男児っぽいけど、どっか女子っぽさが残る感じの子。
「お帰りなさい」
そして奥から少し嬉しそうに出てきた子は冬葱雫。霰の暫定の姉。表情はあまり変わらないけど、笑顔になるときゃなる。そんな子。
「はい、ただいま」
家に入って時計を見ると20時を過ぎており、時間が流れるのは早いなぁ……
と、と思いながらぼーっとしているといつの間にか23時になっていた。
「あ、そろそろ寝ないと」
灯りを消そうと思い、ランプの火を消すと、完全に暗くなった。
こうなると何も見えないので、取り敢えず持ち運び用のランプとマッチを持ってこようと立ち上がる。
「よっこらせっと」
そろそろ歳かな……なんて考えながら感覚で歩いていると、何かとぶつかった。
「あ、すみま……」
せん、と言おうとして口を閉じる。何故ならここには雫と霰以外いないはず。2人とも寝てるし、2階から降りてきた気配もなかった。では、この気配は……?
すっとぶつかった方を見ると、少し目が慣れたのかぼんやりと見えてきた。
「えっ!?」
と、同時にびっくりした。そいつ、ボロボロの着物に死神が持ってそうな大鎌を持っているのだ。
そう、死神。
向こうも気付いたのか謝ってきた。
「すみません。ちょっとお尋ねしたいんですけど、ここら辺に冬葱静さんって人住んでません?」
謝ってなかった。ちょっとショックを受けながらも一応質問に答える。
「あ、私です」
そういうと、そいつはめっちゃびっくりしたのか一歩後ろに下がって土下座した。
「すみません! こちらの手違いで貴方を殺そうとしてしまいました!」
なんかすごく厨二病っぽい言葉を発するなぁ……と、思いながらこういう。
「その前に、貴方は何者なんですか?」
その質問に、小声であっ、これは失礼と言ってからこういった。
「こちら、“元“死神省省長。ヤマイと申します。この鎌に誓ってそう言います」
なんか勝手に誓われたのだが、気にしないでおこう。
「死神がなんか知りませんけど、早く帰ってください。眠いんです」
そういうと、また向こうは少々びっくりした感じの動きをし、こう言った。
「また、迎えにくるのでそれまで生きててください。それでは」
そういうと、地面に吸い込まれるように消えた。
もしかして……、いや、違う。死神なんてまやかしにすぎない。幻覚でもみてるんだ。
そう、自分に言い聞かせながら寝室へ向かい、ベッドに潜り込んだ。
が、結局その日寝れたのは朝焼けが綺麗な時間帯だった。
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