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乗車したバス停から2つ先の停留所で彼女は降車していった。
降りる時に目に止まったのは、彼女が大事そうに持っていた小さな紙袋。
(きっとあれは…)
小さく頭を振る。
わからないことを考えてはいけない。
そう思いながらも、その紙袋が誰の手へ渡るのか考えずにはいられなかった。
学校の最寄りにあるバス停へ止まった。
カイトと共にバスを降り、学校へ向けて歩き始める。
そういえばさっき後部座席に座っていた、あの黒い男の人はどこで降りるのだろう。
乗車中一度気になってしまうと、後ろから刺すその視線から意識を外すことがなかなか出来なかった。
降車してからカイトと他愛も無い会話を繰り返し、校門に着いた。
普段に比べいくらか男子が浮き足立っているような気がする。
靴箱まで行き、中を除く。
勿論甘いお菓子が入っているわけはない。
(わかってたって。)
そう心の中で呟き、上履きを取り出した。
その時背後から視線を感じたような気がした。
振り向くとチョコを持った女の子と目が合った。
だが女の子はパッと踵を返し、向こうへ駆けていってしまった。
「まさか…」
つい声が漏れていた。
まさか僕宛てのチョコ、なのか…
上履きを吐くことも忘れ放心していたところ、カイトが俺のとこまで駆け寄ってきた。
「ソウスケお前、上履き持ったまま何ポカーンとしてんだよ。」
呆れた顔で僕を見る。
「ほら予鈴なるから。さっさと行くぞ。」
促されやっと上履きを履いた僕は、教室へと向かった。
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