8人が本棚に入れています
本棚に追加
対策を立てる
朝になって重たい頭で考えた。
このままではこっちが参ってしまう。
拝み屋とか?ツテがないのでインターネットで検索してみる。
値段もピンキリだし、相場もよくわからないが近くのお寺で縁切り供養をやっているようだ。
知らなかった。知らなくて済んだなら幸せなんだろうな。
次の日電話をして日曜に供養に行く事にした。
お寺のお堂の中は春にしては寒い日だったのでしんと冷えていた。俺は年配の和尚さんと向き合った。
「それで別れた奥様と縁切りされたいと?」
「あ、いえ…」
「妻は死んだんです」声が小さくなる。
「ほう」
「毎晩枕元に出るので止めさせてほしいんです」
「奥様はあなたの事を心配してるのではないですか?」
「ずっと恨み言を言ってます」
「ふむ」
頷きながら和尚の視線は一点を見つめている。こちらを見ているが…俺の顔から視線がずれている。
「ああ…」和尚は視線を下にずらすと
「うちでは扱えませんね」と言った。
「そんな!」
「力が強すぎます、他を当たって下さい」静かに言われた。
「そんなことを言わないでなんとかして下さいよ!」もう半分泣き声だ。
「こんなに恨まれてるなんて…」和尚の声が揺れ始める。
「何をしたんですか?あなたは…」棒読みの声から一転して
「あの晩なんで帰ってきてくれなかったの?」妻の声で和尚は喋った。
びっくりして和尚の顔をまじまじ見ると平らな表情のない顔から次の瞬間驚いた顔に変わった。
「何か言いましたか?」
「いえ、何も」
コートを羽織り下を向いたまま家に急いだ。
最初のコメントを投稿しよう!