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まさかもうないだろう、と思っていたことは、簡単に現実に起こった。
母に付き合っている人がいるというのは知っていたが、よくて事実婚、みたいな形に収まるんじゃないかと思っていたのに。
「本当にこの家に1人でいいの?」
「むしろ、僕はこっちじゃないと多分無理。新しいお兄さんとも付き合える気しないし」
「いつでも来ていいんだからね」
「わかってるよ」
「あっちの家に、あなたの部屋だっていつでも作れるんだから」
「わかった、ありがとう。これが最後の荷物でしょ?一緒に持っていくよ」
マンションの下には大きな白い車が止まっていて、母と僕はその車の中に荷物を積んだ。
車の中の荷物を崩れないように詰め直していたのは、僕の新しい義理の父親である。
貴彦さんの父親だけあって、年をとってもやはり顔は端正だった。
どうして母親を選んだのか、もっと若くて可愛い子だって選択肢にあったんじゃないのかと思うけど、そこは僕が口を出せるところじゃない。当人達で決めたんだから、仕方ない。まぁ、別にこの結婚に異論があるわけでもないんだけど。
「じゃあ、行くわね」
「荷物崩れないといいね」
「学校ちゃんと行くのよ」
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