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「島はもともと陸地デシタ。
でも今はサンゴ礁だけの島ネ。
温暖化で海面上昇して、水没シタ」
船を運転しているオヤジは浅黒い顔に皺を刻んだ外国人だったが、片言の日本語で話しかけてきた。
「海面上昇」なんて難しい単語をよく知っているもんだと感心する。
「サンゴ礁知ってるカ?
長い時間かけてサンゴがカルシウム分泌する。
そのカルシウム、島を取り囲んだ地盤になるネ」
「ふーん、よくわからないけどすごいっすね」
「でも今、海汚れてサンゴどんどん弱ってるネ。
海も空も、地球の自然はぜんぶ繋がってル。
サンゴ死ぬのも、島沈んだ温暖化も、あなたたち先進国のせい」
たどたどしいからか、こちらを試すような口調に聞こえてギョッとした。
「はぁ? サンゴに死ぬとか生きるとかあるのかよ」
日雇い仕事をしていたときの癖で、反射的に舌打ちしてしまった。舐められないための処世術だ。
そんなこと俺ひとりに言われたってどうしようもないのに、こんなところまで来て責め立てるような真似は勘弁してほしい。
それに、見知らぬ島の環境破壊なんて俺にとってはどうでもいいことだ。
せっかくの爽快な気分に水を差された俺は、こちらをじろっと見てくる船長と距離を置くため、操縦室を後にした。
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