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船尾に備え付けられたベンチを発見すると、身を横たえて目的地到着までひと眠りすることにした。
船長はいけ好かないやつだったが、これからのリゾートライフが楽しみで、いい夢がみられそうだった。
都会のみみっちい生活とはおさらばだ。僻地で物価も安いだろうし、今までとは比較にならない給料が出るのだから、現地の美女でも引っかけて贅沢三昧やってやるのも悪くない。
海風が吹き抜ける船上は涼しいかと思ったが、それを無に帰すほどの容赦ない陽射しが照りつけてくる。俺は日本から着てきた安物のシャツを脱ぎ捨てた。
くたびれたタンクトップ一枚になるとようやく暑さが和らいで、日光の中でまどろんだ。
飽きるほどの時間が流れたあと、船の揺れの変化に目を覚ました。
見ると、野球場ぐらいのサイズの小島に、船は着けられていた。
しかしこれは島と言っていいのか……中央の大部分には陸地がなく、細い外縁部がまるく輪のような形になっている。
ところどころ低木の生えた白っぽい海岸線が、ドーナツのように内海を取り囲んでいた。
そういえば、この島は現在サンゴ礁だけでできていて、もともと陸地だった部分は水没したとか言っていたな――。
奇妙な光景を前にして、ここに来る途中、話半分に聞いた船長の言葉を思い出す。
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