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立っているのも苦しくなってきて耐え切れず、白く硬いサンゴ礁の上に身を横たえた。
ひんやりとした冷たさを期待したが、日光を存分に溜め込んでいて生ぬるいのが忌々しい。
あぁ、このままじゃ死ぬ。冗談抜きで死ぬ――。
朦朧とする意識が途切れないようにどうにか保っていると、顔の上に影が差した。
薄目を開けてみれば、日に焼けた何人かの男たちが俺のことを見下ろしている。
良かった、現地の人だ。助かった。
「やっと次の、新しい<バイト>来たネ。
おまえ、カルシウムになるまでもう少し待つネ」
男の言った意味がわからなかった。カルシウムになるってどういうことだ? 人間がカルシウムに?
そこで、さっき頭に過ぎった「死」という文字がよみがえった。
――いや、待て。このまま死んで肉体が腐敗すれば、骨だけが残る。つまり、カルシウムだ。まさか……。
ひとつ確かなことは、男たちに俺を助ける気はなさそうだ。
ほかに救いを求めようにも、男たちに取り囲まれて、こんな異国の島に味方がいるはずもない。
いや、仮にここが日本だったところで、俺には頼りにする親族のひとりもいないのだ。
俺の消息が途絶えようとも、それを不審に思う人間などこの世に誰ひとりとして存在しない。
金さえあれば人付き合いなどせずとも生活できる日本では、抱いたことのない無力感に俺は苛まれはじめた。
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