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そんな俺の絶望など気にするわけもなく、刺青の入った上半身を露出した厳つい男が話を続ける。
「ここ、領海つくる大事な島ネ。
サンゴ死んで島が消滅したら、経済水域もなくなるネ。
減っていくサンゴの穴埋めに、カルシウム必要デス」
「そ、そんな……それなら……人工的にセメントか何かで埋め立てたらいいじゃないか……」
口を開けば、ますます体から水分が抜けていく。
ティーバッグの出涸らしみたいになった俺の、息も絶え絶えの一言に、一番奥に立っていた年嵩の男が大袈裟に肩をすくめた。
日本では目にしない原色づかいの派手な腰巻が、俺の目線の斜め上で嘲笑うように揺れる。
「自然に出来たものだけが島。
コレ世界の決まりネ。国際海洋法。
おまえ、大きくて安泰な島国から来たカラ、知らないダケ」
そうか、俺たち人間の肉体だって自然の一部だ――。
意識が薄くなっていく中で俺は、やつらがネット求人に仕込んだ罠について理解していた。
つまり、募集されていたのは、生きた労働力ではなく、死んでカルシウム源になるバイト……。
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