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何か、身体全体に心地よい暖かさを感じる。
少し足を動かしてみると、肌触りの良い毛の長い布が当たる。
頭から足の爪先まで、毛布がすっぽりとくるまれていた。
心地の良い温もりに、覚醒し始める思考を鈍らせる。
時間をどれくらいに過ぎたのだろうか?繰り返し葛藤をして、ようやくと起きる覚悟を決める。
目をゆっくりと開けた。
何も見えなくて、顔に当たる毛布の感覚。
横向きで、下になってない左手を動かして毛布を退かす。
上半身を起こして、辺りを見渡しても真っ黒だった。
絶妙な揺れから、私はベッドの上で寝かされていることを知る。
ここは、どこだろうか…。
何も見えない。
鼻を研ぎ澄まして、スンッと匂いを嗅いでみると、嗅ぎ慣れた知っている部屋の匂いではなかった。
私の部屋は、甘ったるい木苺系のフルーツの香りがしてる。
ここは、仄かに爽やかと香る柑橘系の匂いがして、好みではないが不快と思える嫌いな匂いではなかった。
少し時間が経っても、瞬きをしても、暗闇で何も見えなかった。
何故、こんなことになっているのだろうか?
暗くて何も見えなくて、知らない部屋だ。
怖くて、身が震えてしまう。
「誰か居ませんか?」
答える声が聞こえない。
それが、なんだか寂しいと感じて
「私はここにいるよ」
自分の声以外が聞こえない。
ずっと、ここで黙っている事も出来ず、動き出すことにした。
木の材質を使ったフローリングの冷たさを想像して、片足を床に着けてみたら絨毯が敷かれていて、足が冷えることもなかった。
暗くて知らない部屋であるから、家具等の見えない状態で歩くのは危険で不安の障害物を知らないから、恐る恐ると動き出す。
手を前や横に忙しなく動かきなが、少しずつ足を進めると程なくして手が壁に当たる。
ザラっと暖かい小さな細かいクッションのような普通の壁。
壁に左手を手のひら全体で触れさせながら歩く。
10歩進んだ先に1個目の角に当たる。
そこから、歩いていくと右手にツルッとした軽い材質の壁に当たる。
「これは?」
掌ででトントンと叩くと軽い音が跳ね返る。
顔を近づかせて香りを嗅ぐと余り強い香りが無くて無臭だった。
香る場所を変えながら鼻に神経を研ぎ澄ますと、木のような香りがした。
「これは、木の....。何か入れる箱...この大きさだと、洋服を仕舞うクローゼットかもしれない」
両手で突起がないか調べる。
すると、私が辿り着いた面ではなく、私の位置から右の面にひんやりとした細長い棒があった。
右側に回り込んで、ふたつの棒を両手に引っ張ってみると小さな風が、私の髪を踊らせる。
木の匂いと石鹸の様な香りが広がった。
右手を前に出すと沢山の布がぶら下がっているように放置されていた。
「やっぱり、洋服なんだ。」
掴んでみると、綿の様な肌触りが良かった。
クローゼットのドアを閉めてて、また、壁伝いに歩き出した。
2つ目の角を曲がって直ぐに、お腹くらいの高さで硬い冷たい物に当たった。
「これはなんだろう」
手で触ってみると、ボウルのような形の受け皿、手をかざすと水が出てきた事で、これは洗面器だと気づいた。
壁伝いに歩き出すと3つ目の角に当たった。
12歩くらいで4つ目の角に当たった。
10歩進んだ時に、左手で触れた壁の材質が違っていた。
これまた、クローゼットと似たような木の材質っぽい感じの触り心地。
叩いて見ると、クローゼットの軽い音ではなく頑丈な作りになってると分かる音が鳴った。
私は、握るタイプの突起を見つけた。
「やっぱり、ここはドアなんだ」
ドアノブを捻って開けようとしたけど開かなかった。
ガチャガチャ
ここが、どこだが分からず外に出られる手段はこのドアしかないと確信して、必死に開けようとしても残酷な事に鍵が掛かっていた。
「誰か」
右手をドアノブで開けようとしながら、左手ではドアを叩いて助けを呼ぶ。
左手を手のひら、拳でと変えながら叩く。
どれくらいの時間が経ったか分からない。
喉を痛め、両手も痛めただけで何も変化はなかった。
暗くて見えないけど、絶対に私の手は赤く腫れているのであろう。
開かないドアの変化を諦めた私は、再び、左手を指先に触れさせながら壁伝いに歩き出す。
更に12歩進むと、角に当たった。
そして、進むと気の材質に当たる。
躊躇いなく、細長い棒を探し当てると引っ張る。
木の匂いと石鹸の香り...右手を前にだすと大量の布があった。
ここは、クローゼット...。
疲れた私は、寝ていたベッドに戻りたいと思った。
元来た道を戻り、角から歩きを10回数えた。
ここから、真っ直ぐに行けばベッドがあるはず。
慎重に歩いてると予想した通りにベッドがあった。
寝転がろうと思った時、不意に左手がぶつかった。
「いたっ」
恐る恐ると触れると、机っぽい感じだった。
「さっきは気づかなかったけど...」
私が眠ってたベッドの横すぐに机が置いてあった。
机の縁を親指と人差し指で大きさを確認する。縦が2個半で横が3個分位のそれ程まで大きくない小さな机だった。
机の上には、ガラスのコップの感触があり中に指を入れてみたら、特別な感触が無い液体だった。恐る恐ると舐めてみると唯の水であった。
他にも何かないかと探す。
ドアの鍵があれば良いなと希望を抱きながら手を動かすと、プラスチック特有の感触と触った音がした。
「中に、何かあるのかしら?」
中には紙袋が入ってきた。
更に中身を確認しようとしたら、何かを守るかのようにプラスチックで小さな丸が複数に均等な間隔があけられていて繋がっていた。
「もしかして」
小さな丸側ではない反対側を爪で切る。
すると、軽い小さな丸い物体が出てきた。
ガチャッ
私が何をしても開かなかったドアの鍵が開けられた音がした。
諦めていたドアの変化に驚いた。
ここから出られる事に、嬉しいいと思う感情と訳も分からないままで知らない場所に放置された事から、警戒心と恐怖心にも苛まれる。
ドキドキしながら、音の方に顔を向けた。
開いたはずのドアが真っ黒であった。
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