託されたもの

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託されたもの

 その日は、一段と散歩日和の天気だった。  牧師の務めであるお昼の礼拝を終え、私は教会の一室で、アンドリュー牧師の日記を読んでいた。アンドリュー牧師は、私の三つ前の牧師で、実の曽祖父でもある。私がまだ幼い頃、曽祖父はこの村の歴史や教会のこと、村の言い伝えなどいろんな話をしてくれた。  今となっては、この村で暮らすほとんどの人が村の言い伝えを信じていない。私も成長するにつれて、村の言い伝えは子どもを怖がらせるためのものだろうと思って、信じなくなった。  体調を崩したことがきっかけで、曽祖父は身体が病弱になり、一日のほとんどの時間をベッドで過ごすことになった。私の父は村に唯一いる医者で、母は子どもたちに言葉を教えていたため、二人とも日中は忙しく、私と妹で勉強の合間に曽祖父の世話をしていた。  食事をとるときは、曽祖父の身体に無理がないように、曽祖父の部屋で一緒に済ませるようになった。食事をとりながらその日の出来事を話すのが日課だった。曽祖父は私の話に耳を傾けて、表情をころころと変えるが、元気だった頃の面影からは想像できないほど弱々しいものだった。
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