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うそつき
「うそつき!おかあさんのうそつき!」
妹の柚子音が部屋に入ってくるなり叫び散らす。
小学3年生になった妹は、毎日僕の部屋に来ては色々散らかして帰っていく。
「お兄ちゃん!おかあさんね、うそついたの!今日、雨降るから傘持ってってねっていって、わたし傘持ってったら、みんな持ってなかったの!雨も降らなかったの!」
「昨日もね、ピーマン食べたら大きくなるってがんばって食べたのに、全然大きくならなかった!」
「一昨日も、いい子にしてたらお兄ちゃんとお話できるって言ってたのに、お兄ちゃんちっとも起きない…。」
「お兄ちゃん……おきてよ……。」
僕は3年前、妹の誕生日プレゼントを買いに出掛けた。相手の車の不注意で、バイクに乗っていた僕は横から跳ねられ、脳に大きなダメージを負い、いつ目が覚めるか分からない状態にある。
すぐに帰ってくると言ったのは僕で、いい子にしててねと言ったのも僕。妹は何も悪いことをしていないのに、毎日僕の部屋に来て、泣いて、少し寝てご飯を食べに部屋を出る。
お母さんは嘘をついてるんじゃなくて、柚子音のことが心配なんだよ。僕も心配してるよ、毎日毎日、頭を撫でてあげれたらって思ってる。何も動かせなくて眠っているけど、柚子音の声はちゃんと聞こえてるよ。
…すぐに帰って来れなくて、嘘ついて、ごめんね、「ゆずね。」
「……え、っ…、おにい…ちゃん……!」
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