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白バイ
「バイク、ひとりで勝手に走ってっちゃったんでね」
「バイクが、一人で。量詞はそれでいいのね」
「気にしない気にしない」
「はい」
「私は仕方ないから、歩いて帰った」
「うん」
「でもね、しばらく歩いていたら、いたんだよ。白バイに止められてた」
「ああ」
「20キロの速度オーバーだって」
「ほお」
「でね。白バイの警官がバイクに免許を見せろって言ってる」
「ほおほお」
「でも、相手がバイクだから、免許なんて持ってない」
「無免許か。無免許運転」
「いや。運転はしてない」
「そっか。本人がすごいスピードで走ってるだけ」
「そうなんだよ。悪いことしてないよ。あの子は」
「してるよ。多分。危ないじゃん」
「そうかなあ。でもさ。例えばね、速度制限40キロの道を60キロのスピードで走ってるジョギングの人を警官は止められるのかねって」
「いや。それとこれとは話は別でしょ。それに人間は時速60キロで走れるの?」
「どうだろ。でもさ」
「何?」
「ジョギングって免許いらないわよね」
「もう何言ってんのかわけわかんねえよ」
「だったら自分で走ってるバイクも免許いらないよね」
「ねえ。バイクはエンジンを積んでる。火力だよ」
「そうは言うけどね、太一」
「何?」
「でもね、でも。自由に、思い切り走りたかったんだよ!あの子は!」
「一体何を興奮してるの?」
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