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今日は久しぶりに早く帰宅したので、掃除機をかける事にした。その間、洋くんはお酒を買いに行くと出かけた。 あの事を言わなきゃな、そんな事を考えながらかけていたら肘でタンスの上にある書類入れを床に落としてしまった。全部ぶち撒け。溜め息を漏らしながら、書類を拾っていると一枚の手紙を見つけた。宛先は洋くんの名前。宛名は聞いた事ない人の名前だ。何、これ? 私はドキドキしながら、中身を開いた。 〝天野洋様 お元気ですか?洋が上京してから数ヶ月経ちましたね。私は相変わらず元気です。小説は頑張って書いてますか?あれから色々考えて、やっぱり私にはあなたが必要なんだと気付きました。もし今、好きな人や付き合っている人が居なければ寄りを戻しませんか?連絡待ってます。(連絡先 090-XXXX-XXXX)              秋山日和〟 え?何これ?昔の恋人からの手紙? ヒラリと何かが床に落ちた。 それを拾い上げると、洋くんと知らない女の人が映っている写真だった。スマホで撮った写真。写真の中の2人は寄り添って、楽しそうに微笑んでいる。胸がギュッと痛くなる。写真の裏には、去年の夏の日付と〝水晶浜にて洋と〟と書いてある。 「詩さん、ただいま!どうしたの?」 「洋くん、これ……」 私は泣くのを堪えながら、手紙と写真を洋くんに見せた。 「あ、それ」 「昔の恋人からだよね?連絡するつもりで、大事に仕舞っておいたの?」 「いや、違う」 「洋くんが何で私に手を出さないか分かったよ。その人の事がまだ好きだったからなんだね」 「え?何言ってるの?詩さん」 「だって、そうじゃん。もう、ツライよ……私ばっか洋くんを好きなんだもん。自分ばっかり好きなの疲れちゃったよ……」 顔はもう、涙と鼻水でグチャグチャだ。最悪。 「詩さん?」 「私ね、店長が大阪で新店舗オープンするから、来ないか?って誘われてるの。そのお店メイクの教室も一緒に通えるからいいなって思ってて。でも、洋くんと離れたくないから悩んでた。だけど、もう悩む必要がなくなった。洋くん、別れよっか?」 「大阪?さっきから何言ってるの?」 伸びてきた洋くんの手を振り払って、私は玄関のドアを開けて飛び出した。 運動神経は悪いくせに、逃げ足だけは早い私。 どこに向かってるかも分からない。とりあえず、苦しくって、悲しくって、涙が止まらないだけ。洋くんの恋人、すごく綺麗な人だった。 私なんて敵わないに決まってる。特に可愛いわけでも、綺麗なわけでもない。こんな私でも、洋くんは好きだって言ってくれた。すごく嬉しかったけど、最近は私だけが好きみたいで寂しかった。その理由がさっき分かった。 洋くんは優しいからずっと居てくれたんだ。 私は知らない内に夜の公園に来ていた。洋くんとよく散歩した場所。手を繋いで歩いて、星が綺麗だねって一緒に笑って。 懐かしいな。 きっと、もう、戻れない時間。 ガッ! 突然、誰かに腕を掴まれた。 「キミ可愛いね!俺とどこかに遊びに行かない?」 「……え?」
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